桜の季節が近づく3月になりました。
皆様においては、変わりなくお過ごしでしょうか。
春が近づき、企業では期末の忙しい時期でもあります。
そんな中、2月23日の休日には、
「ピアニスト髙橋望による ブックトークと音楽」と題し、
音楽と本をテーマにしたハイブリットなイベントを都内で開催しました。

本と音楽のマリアージュ
「ピアニスト髙橋望による ブックトークと音楽」を開催
https://tech-dialoge.hatenablog.com/entry/2024/03/05/203400

演奏家が読み取った音符で奏でられた音楽により高まった来場者の耳の感度で、
本から読み取られた文字の想いに共感するという、これまでにない本の体験を会場で共有しました。

長らく出版不況といわれ、デジタルによる情報が氾濫する昨今、
アナログの本や読書体験の評価が高まっています。

今後も、本をテーマにした場をさまざまな形で提供できたら
と考えていますので、お楽しみに。

●今月のブログ
読みました:『ネオ・ダダの逆説 ~反芸術と芸術~』
(菅章 著、みすず書房 刊) ~アートとその本質とのジレンマ~
https://tech-dialoge.hatenablog.com/entry/2024/02/29/060000

「SEによる、SEのためのパワー交換会」を開催しました。
https://tech-dialoge.hatenablog.com/entry/2024/02/23/083000

第45回・飯田橋読書会の記録:『アラブが見た十字軍』
(アミン・マアルーフ著)
https://tech-dialoge.hatenablog.com/entry/2024/02/20/105224

「クイーンと私」【その3】:『クイーン詩集』
https://tech-dialoge.hatenablog.com/entry/2024/02/16/090000

2/23(金)休日、イベント「ピアニストによる ブックトークと音楽」を開催します
https://tech-dialoge.hatenablog.com/entry/2024/02/08/153410

読みました:『ねむれ巴里』(金子光晴著)
~濃い日本人が多数登場する1930年詩人のパリ滞在記~
https://tech-dialoge.hatenablog.com/entry/2024/02/08/093905

「クイーンと私」【その2】:『戦慄の女王』
https://tech-dialoge.hatenablog.com/entry/2024/02/02/090000

●今月の雑感:読書会参加の疑問と効能について
~未知と差異との出会いと感動~
近ごろ、読書や教養というキーワードを目にする機会が増えてきた関係か、
「読書会」に関する質問や相談をよく受ける。
世の中にあふれる専門用語が急速に増え、
いわゆる「価値観の多様化」が、本や教養への関心の高まりの原因であるようだ。
今回は、読書会にまつわる疑問や効能を中心にまとめてみたい。

▲読書会に参加するメリットは?
読書会に関する疑問として、いちばん耳にするものは、
「参加するメリットはあるの?」である。
2014年1月から、私たち編集者とITエンジニアの有志ではじめた読書会の発端は、

「一人じゃまず読めそうにない本」
「だけど読んでみたい本」

を読むために、
「ならば、その本を課題図書にして、読書会を開いてしまおう!」

であった。
そこが原点となり、選書の横展開、議論のたたき台やコミュニティの形成など、
活動が広がり継続し、メンバーは3倍以上に増えた。

「参加するメリット」を、参加する側の視点でまとめると、

「1人ではなかなか読めない本が読める」
「人生の同志ができる」

の2点に集約される。

▲読書会とは意識高い系の集団では?
読書会参加への懸念点としてよく聞く意見として、

「意識高い系の集団に入ると不安」
「知識の低さがばれたらどうしよう」
「マウント取られるかも」

がある。

読書会で参加者が取る行動とは本来、

「本を読む」
「そこから感じたものを口にする」

の2要素しかなく、極めてシンプルなものである。
しかしながら、その本ならではのキーワードや専門用語、考え方が混じってくることで、「意識高い系かも」という周囲へ不安や自身の「知識が低いかも」という、「自意識との格差」の憶測を通した不安感や劣等感が醸し出される。
そうした格差の憶測を生み出す最大の要因はなんだろうか。

本とは、場所(住む場所、働く場所、学ぶ場所……)や時代(歴史)を超えた情報という、「未知」を読者に届ける存在である。
そこに、格差の憶測が生じる要因がある。
扱われる場所や時代が変われば、当然、使われる言葉やその意識は変わる。
異文化や異業種など場所を超えた題材を扱う本が読書会のテーマになる場合は、
その場所の背景や習慣を、本から知る必要がある。
歴史的な本が読書会のテーマになれば、
その時代の生活や風俗、政治がどういったものなのか、
それに伴ってどういった言葉が使われていたのかなどを
本から知る必要がある。
そして、この「知る」プロセスを他者と共有することが、読書会の本来の目的でもある。

もし、「自分の意識との格差」を感じたのであれば、
「わからない」と明確に口にすることである。
それが自由にできる場であるか否かが、読書会のクオリティの高さを決定する。
これは、上記の「マウント取られるかも」に通じる。
読書会の中で、知識格差のある参加者に対して
「けしからん、勉強不足」などと、頭ごなしに高圧的な発言をし、
上下関係を作ろうとする人物がいることも聞く。
こういった人物の存在は読書会のクオリティを著しく下げる。
場に紛争を招いたり、「だから読書会は嫌なんだよ」という意識を参加者たちに植え付ける。
こうした言動のある人物は、私たちは読書会の場から即刻お引き取りを願うよう決めている(直接にはまだ遭遇したことはないが)。

逆に、こうした「上下関係」の構築を目的とした読書会があることも事実である。
たとえば、新興宗教やマルチ商法への勧誘にも読書会が使われる。
読書会を通して参加者を催眠状態に引き入れ、
参加者との絶対的な上下関係を構築し、継続的な金銭収入に結び付ける。
見方を変えれば、これだけ読書会は、毒にも薬にもなる強力なツールなのである。

▲読書会に参加する効能は?
読書会に参加する効能とは、なんだろうか?

「読書という個人的な体験を通して、他の人との差異を共有できること」

である。

自分一人では読めなかった本を他者と読むことができたり、
よくわからなかった内容や記述が他者の意見を聞くことで、
「なるほど」と理解できたり、思いもよらない新しい読み方ができたり、
さまざまな「差異」を発見するきっかけを手にすることができる。
差異とは本来、価値の源泉である。

参加者と自分の意識との格差を、「差異」として楽しむことができるかどうかが、読書会に参加する意義の鍵となる。

話をさらに広げれば、一冊の本をたたき台に、膨大な知や文脈を参加者と共有し、思考や知恵を交換し、読書会から集合知が出現する。

前述のように、読書会は毒にも薬にもなる強力なツールである。
これから読書会に参加してみたいという人は、
それが自分にとって薬なのか毒なのかを、感性に従って見極めてみよう。
もちろん、軽い好奇心から参加してみるのもよい。

イベントやメルマガ、ブログなどで、これからも読書会関連の内容をフォローしていく。
興味のある方は、ぜひお声がけいただきたい。

* * *

今後も、さまざまな対話と交流の場の提供を計画しています。
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心動かされる明日が見えますように!

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