2度目の緊急事態宣言が発令され、あっという間に2月が到来。
生活の「日常」が変わる中、
流れる時間に対する感覚もまた変わっているようです。

この時期、方々でDX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉が飛び交っています。
ITを使ってビジネスや価値の構造をガラリと変えてしまおうという壮大な意味のこもった言葉です。

「ISやMIS、Web2.0など、いままで出回っていたバズワードと同じではないか」という意見も聞かれる中、
現場ではDXにいたる前段階の「業務のデジタル化」が掘り起こされている状況です。

業務のデジタル化も何十年も前から言われていた話ですが(「ペーパーレス」など)、相変わらず進みづらい現状であると聞きます。

商習慣や人員減少の危惧など、いろいろな要因が叫ばれてきましたが、
実際のところ、明確にわかりません。
一言でいうと、
デジタル化を嫌悪する「空気」が現場を取り巻いているのかもしれません。

現場のデジタル化はDXの大前提といいつつ、
なにからなにまでデジタル化することに抵抗する日本人のメンタリティの中には、もしかしたら、「お宝」が隠されているのかもしれません。

日本人のメンタリティはそうそう変わりませんが、
なんらかの「理由」さえ見つかれば、さっと変わるはずです。

ワクチン接種の履歴管理など、
いまの社会状況において、DXの実現は私たちの生き残りの課題でもあります。
日本人のメンタリティとDXとのせめぎ合いが、いま起こっています。
DXに関しては、また考えていきたいです。

日本人のメンタリティに秘められた「お宝」を残しつつ、
日本流のDXはうまくいっていただきたい。

そして、ITを支える私たち一人一人の活動が、その実現の一助となることを!


●今月のブログ

おかげさまで4年目を迎えました。
http://tech-dialoge.hatenablog.com/entry/2021/01/16/185726

新年、あけましておめでとうございます。
http://tech-dialoge.hatenablog.com/entry/2021/01/04/213305


●今月の雑感:編集、この愛すべき仕事(後編)
編集者のやりがい
ざっと、編集者の仕事の流れを見てきた。
編集という仕事を選んだ限り、やはり、やりがいは欲しい。

どんな仕事でも、給料をもらったり、
売り上げがあがったときは、うれしく、ありがたい。
そして、この仕事をやっていて良かったという感謝や、喜びに満たされる。
しかし、仕事はお金だけではない。
誇りにつながる、やりがいは重要である。
以下、私の個人的な経験から、編集者としてのやりがいをあげてみる。

・読者にありがとうと言われたとき
・著者にありがとうと言われたとき
・重版したとき
・著者さんと打ち上げをするとき
・書店員に喜ばれたとき
・社内に笑顔が増えたとき
・業界から賞をいただいたとき
・満足のいくものが作れたとき

私にとって、読者から「ありがとう」という言葉を
聞くことこそが、編集者冥利につきる。
「この本を担当してよかった」「編集者でよかった」と、心から思う瞬間である。
私はいまでも、編集者という仕事を選択してよかったと自負している。

編集の仕事のキモは、企画である
日本人は、形ある手に取れるモノを重視する。
だから、自動車などモノづくりは強い、という声も聞かれた。
同様に、日本人の(手に取ることのできない)コンテンツ文化は
高度だという声も聞く。
編集者の仕事は一言でいうと、コンテンツを生み出す助産婦である。
ゼロからイチを生む仕事のお手伝いをするプロデュースの仕事だ。
ゆえに編集の仕事自体には、形がない。
具体的なルーチン作業が見えづらい。
原稿整理や印刷所との交渉、版元(出版社)内部での折衝などのルーチン作業はあるが、これらは編集の仕事の中核(価値を生む部分)ではない。

「これ」というはっきりとした作業の中核が見えづらいから、
「編集者ってなにをやっているのだろう」という疑問がよく聞かれるのだ。

しかししいて言えば、
編集の仕事の中核(価値を生む部分)は、「企画」に尽きる。

企画は、体と頭を使うだけでできる。
大きなビルや設備機器、大人数での協業が必要なものではない。
企画は、体と頭一つでできる。

編集の仕事は可能性のカタマリである
編集者は企画書をつくり、人と人との間に立ち、なんでもする。
理論的には、天皇陛下に企画書を持って行き、執筆を依頼することだって可能だ。
そしてその本が世に出され、世の中を変えることもできる。
テレビやWebの影響力は確かに強いが、本の影響力の強さは、捨てたものではない。
そのいちばんの理由は、情報が固定的で残るところにある。
情報が流動的なテレビやWebとは真逆である。

情報が固定的だから長期にわたる読み返しができる。
また、文脈を判断し、論理思考が可能だ。
そして商業出版物にいたっては、編集制作者の査読が入る。
これにより、情報の正確性が底上げされる。

このように編集の仕事は、形がないものに価値が発見される時代の職業、
企画という形のないものに本としての価値を与える職業であるともいえる。

人と人をつなげ、人と情報をつなげる編集という仕事は面白い。
そしていまや、テクノロジーを通して人と人とをつなげることができる。
誰もが編集者になれる時代だ。

自分だけの小さな書店を開いてもよい。
そこで仲間と同人誌を作ってもよい。
自分のやりたいことを企画し、モノを集め、人を集め、
情報を集め、オンラインやオフラインで勉強会をやってもよい。

なんでも編集し、新しい時代をつくろう。
お金にすることはもちろん重要だ。
しかし、もっと自由に、ワクワクと、
行動を起こすことがより重要な時代である。
なにがお金になるのかわからない。
行動を起こすこと。
行動こそ、お金に勝るものはない。